フォロワー2万ちょいのインフルエンサーが、さらなるインフルエンサーの闇に迫るわよ

きゃりーぱみゅぱみゅさんが "ギフティング(メーカーさんがPR投稿してもらうことを期待してインフルエンサーに商品を無料で渡すこと)"の闇について語った記事について、マイクロインフルエンサーがさらなる闇について書きました
りょかち 2022.04.15
誰でも

友だちからシェアしてもらった記事が面白かった。

きゃりーぱみゅぱみゅさんが "ギフティング(メーカーさんがPR投稿してもらうことを期待してインフルエンサーに商品を無料で渡すこと)"の闇について語った記事で、「『良かったらPRお願いします!』と言って勝手に服がブランドから送られてくる」とか、「売り切れ商品をインフルエンサーがもらった風にSNSシェアしててもやっとする」とか、PRをやったことがある人やインフルエンサーだけでなく、そういった投稿を見たことがある人も含めて「わかる〜〜〜〜〜!!!」と感じる内容になっている。

私もフォロワー2万ちょいのマイクロインフルエンサーなので、「あるあるだ…」と思いながら読んだ。ただ一方で、オンライン上のメディアを愛する人間として、PR投稿が全部悪いとなるのも寂しいし、「じゃあなんでこんな悪が続いているの?」かというと、さらなる闇があるからなので、ざっくり書いていこうと思う。

そもそも、ギフティングって何のためにやるの?①みんなが見るであろうレビューをつくるため

インフルエンサーが、人気商品を紹介している動画や投稿を見かけるのは今や日常になってしまった。記事に書かれている通り、「どうしてちまたでは商品が売り切れているのに、この人は無料でもらえるのよ!」とモヤッとしてしまうこともある。ではどうしてPR投稿はなくならないのか。

それはもちろん、現代人の情報源がUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ=一般ユーザーが投稿したコンテンツ)に偏っているからである。

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

Z世代の意識調査では、新しいブランドの認知経路の上位はSocial Mediaが占めている。私たちがSocial Mediaで見ているものはなにか?もちろん企業によるコンテンツもあるが、ほとんどが友人や有名人など一般ユーザーが投稿したコンテンツである。

さらに、こちらの動画の1:10秒あたりから見てもらえばわかるが、Z世代は消費行動をする際、非常に慎重に行動することがわかっている。レビュー動画を見て、実際の商品を店舗で見て、さらに情報を集めようとする。動画の続きをみてもわかるが、特定の商品の評判を調べるとき、見ているのは、友だちや親やインフルエンサーなど個人が発信したものが中心だ。

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

Z世代じゃなくても、この消費行動に共感する人は多いのではないだろうか。モノを購入するときや、誰かと会うお店を決めるとき、好きな映画を見ようとするときでさえ、なにかを検討するにあたって、誰かのレビューを参考にしている人がほとんどだろう。世の中のあらゆる “商品” の評判が可視化されているのが現代である。

カフェを探そうとして、インスタグラムで検索する。今晩見る映画をレビューを参考に決定する。特定商品の評判を調べるときだけではなく、ぼんやりとした要望から消費するモノを決めるときにも私たちは個人の投稿を探しているのだ。

つまり、SocialMediaやレビューサイトで検索し、モノを買うことが当たり前になった時代に、発売してすぐにレビュー(UGC)が無いということは、Googleで検索結果に出てこないのと同じくらい “この世に存在していない” ように感じられることなのだ。

ちなみに興味があれば、Instagramのインサイトを見てみると面白いことがわかる。私はInstagramでは全くインフルエンサーではないが、投稿はフォロワー以上のリーチを定期的に稼いでいる。別で2,000人程度フォロワーがいるグルメ紹介アカウントも運営しているが、「保存数(ブックマーク数)」がフォロワー数を超えている投稿もある。

著者のプライベートなInstagramアカウントとハッシュタグをつけた投稿のリーチ数

著者のプライベートなInstagramアカウントとハッシュタグをつけた投稿のリーチ数

確かにマス広告や数十万のインフルエンサーにくらべればリーチは少ない。しかし私が言いたいことは、Social Mediaの投稿は、フォロワーだけに閲覧されるものではなく(フォロワーの少ない人に宣伝してもらっても意味がないわけではなく)、一度公開されれば、外部の人からも検索され、末永く多くの人に見られていく資産になるということだ。きっとあなたも、どこの誰かわからない人のレビューを参考にしたことがあるのではないだろうか。

そもそも、ギフティングって何のためにやるの? ②彼・彼女らは(基本的には)レビューのプロだから

さらに、ギフティングには喜ばれるケースもある。なぜならプロのインフルエンサーは伝えることのプロだからだ。しっかりと商品紹介をしているインフルエンサーの動画を見たことがある人は知っているかもしれないが、そういったコンテンツには「レビューしてくれてありがとうございます!」というコメントがついたりする。

「情報通のあの人がオススメする名品」が知りたいのは、雑誌の時代から変わらない。

コスメならコスメが好きで色々な商品を使ったことがあるインフルエンサー(KOL=キー・オピニオン・リーダーと呼ぶのが適切かもしれないが)が使った感想を見たいし、映画に詳しい人のレビューが知りたい。それは美味しいお店も、ガジェットも、新作のファッションも同じなはずだ。

むしろこれまではマスメディアにのみレビューする機会が与えられ、我々はお金を払わないとレビューを見ることができないことも多かったが、今は気軽にSNSでマニアのレビューを見ることができるようになった。

もちろんインフルエンサー全員ではないが、私が仲良くしているインフルエンサーはみんな、ホスピタリティにあふれている。新作のコスメをもらったら、「みんな早く知りたいだろうから」と深夜までかけて急いでレビューする。普段から、得意領域の有益な情報を集めたり、見やすいコンテンツの作り方を調べたりしている。どうやった投稿が見やすいかを5時間以上悩んで投稿している人も知っている。いつも彼女たちが口にするのは、「わかりやすいか」「役に立つ情報か」「見やすいか」といった、フォロワーへの気配りだ。

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

引用:Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査(SHIBUYA109lab.)

調査からもわかるように、現代人がインフルエンサーの投稿を信じるのは、「拡散」「紹介」のプロとして信用しているからである。先述したとおり、一度公開されたSNS投稿は(ストーリーズなど消えるものでない場合は)残り続け、検索されて閲覧され続ける。Social Mediaやレビューサイト上に残された、わかりやすく丁寧な紹介は、素晴らしい資産になるに違いない。

ギフティングによって、良質なレビューは次々生まれる、からこそ闇が深い

長々と書き連ねてきたが、言いたいことは「ギフティングが機能すれば良質な情報を生み出すことができる」ということだ。

そして、だからこそ厄介だし闇が深い。

うまく活用すれば、商品を気に入った人の生の声を多くの人に知ってもらうことができるギフティング。

しかし、実際にきゃりーぱみゅぱみゅさんの記事に書かれているような商品に愛情がないレビューが投稿される事例も多い。どう考えても、高額な商品をもらって、「Thank you」だけ言う人が商品を推しているようには見えない。「Thank you」だけ書かれた投稿が役立つ情報として、機能するとも思えない。実際には、一生懸命レビューするインフルエンサーばかりではないし、必要な情報を提供してくれる人に適切な形で商品を渡す仕組みを用意しているメーカーさんだけではないのである。

つまり、ギフティングという手法だけが普及しているものの、適切に機能させる仕組みができていないのだ。

この背景には様々なプレイヤーの様々な思いがある。

商品を送る方であれば、少しでも商品を知ってほしいと興味がありそうなら商品を送ってしまうのだろうし、あるいは、ギフティングの評価指標が「リーチ数」だったりすると、資産になるようなレビューを書いてくれる人よりも、とにかくフォロワーの多い人にモノを渡したくなるはずだ。

そして商品をもらう方も、真面目に商品を紹介したい人ばかりじゃない。そもそもインフルエンサーの人気の理由も多様で、モノを紹介するのが上手だから人気になったわけではない人も沢山いる。だからPRのプロでもないし、頼まれたら紹介しちゃう人も存在する。

「商品を送って『絶対投稿して欲しい』とお願いすること」や「こういったレビューを書いて欲しい、と指定すること」、あるいは「商品を良いと思っていないのに投稿すること」、「PRとユーザーに知らせずに宣伝すること」はもちろん良くないことだ。

結論としては、きゃりーさんが言うように、インフルエンサーは本当に欲しい物を自分で購入して投稿するのが良いし、せめてギフティングを受けるなら良いと思う商品だけを紹介する(SNS投稿必須の案件があると言いづらいのはわかるけれど)方がいいだろう。

コンテンツを見る方も、複数の投稿をチェックするなど、UGCが広告になり得る時代の検索リテラシーを持ってコンテンツを見ることをおすすめする。

ギフティングという行為は確かにいびつなまま普及してしまった。嘘の内容や愛情の無い人に商品が渡っている不快感など、不健全なところもまだまだあると思う。しかし、すべてが悪いわけではない。たとえPRで商品をもらったとしても一生懸命役立つ投稿をしようとするインフルエンサーはいるし、誰かにとって役立つ投稿が生まれることもある、ということが伝われば幸いだ。

先日、とある「この商品インフルエンサーにバラマキしすぎだな〜」と思う商品が実はとってもいい商品でびっくりした、ことに気づいた。やっぱりインフルエンサーにバラまかれて「Thank you」と言われまくっている商品に、自分も胡散臭さを感じているのだと改めて理解した。

身近なマニアたちの正直なレビューを知ることができるギフティング自体はすべてが悪というわけではないけれど、改善が必要なのは間違いない。インフルエンサーが紹介している商品は信用できないというのは、あまりにも悲しい。投稿を読み込む人のリテラシーが高まるのが先か、革命的な仕組みが発明されるのが先か、SNS検索時代の正解が近いうちに見られることを、マイクロインフルエンサーとして願っている。

追記

ちなみに、「じゃあインフルエンサーはどう振る舞えばいいの?」「とはいえ良いレビューばっかり書くじゃん!」という声をもらったので、PR投稿のリアルと、私のケースの対応方法を共有します。ちゃんとしたインフルエンサーは、悪いことも書いたりするし、実は投稿内容は「絶対いいこと書いてね!」と言われているわけでなく自由だったりもする。ただし、とりあえず良いこと書いちゃう人もいるし、ガンガン投稿文指定してくる人たちもいるwそのあたり、人それぞれなのはほんと嫌なとこだよね〜

対応方法は、もっといい方法あったら教えてください!良い対応方法を、インフルエンサー同士もシェアしよう。

<PR投稿 りょかちのマイルール>

・創り手やコンセプトに共感している or 商品が元々好きという案件を受ける・それ以外で使ったことがなくコンセプト等も知らない商品は、モノをもらっても投稿をお約束しない(使ってみて良かったら投稿してください!と先方から言ってくださるケースも多い)。・モノをもらってからいろいろ検討。献本も基本は自分で買うし、もらっても投稿を約束しません(あと、多分前職のオフィスに届いてるやつとかあるので、ここで言わせて!!!ごめんなさい!!!)・商品にまつわるコンテンツを制作する場合は、自分が事前に体験してみたり、商品説明のオリエンを受けられるならできるだけ受けさせてもらう・投稿の内容・期間指定は受けません(だめなところはだめと言いますよ、というのが前提)・PR投稿には必ず「PR」と明記します(もうこれは相手に伝えなくても当然つけちゃっていい)

このくらいでしょうか。前述の通り、「インフルエンサーは信頼がキモ」ということがもっと広がって欲しい。そうすれば、変なPRも断りやすいし、変な投稿をするインフルエンサーも減るんじゃないかなと思っている。

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